スティックのり〈思い出日記シリーズ〉
スティックのり
これは母の話である。
ある日の夜に母から話しかけた。用件は
「のりを貸してほしい」
とのことだった。私は机上にあることを伝えて風呂に向かった。上がったあと、リビングに作業している母。その横を通った。その一瞬母の作業している手元を見た。思わず二度見した。なぜなら、おかしいのだ。サイズが。一瞬小さいサイズののりを使っているのだと思った。しかし、母は私にのりを貸してくれと頼んでいた。私は自分の机に向かい見た。そこにはのりがいた。そのうえで母のもとに向かった。母をよく見ると
「リップスティック」
と書かれているスティックで張り付けている。気づいた時私は「なぜ気づかない」と思った。そして母の指摘した。すると母は「ほんとだ!!!HAHAHA」と呑気に笑っている。呆れていると母は続けて言った。「意外とひっつくんだもん。少し粘着力弱いと思ったけど」。そんな馬鹿な。張り付けている紙をはがす。そしたら意外と粘着力があったのだ。関心した。リップスティック的には唇に塗られたいのに紙に塗られるなんてもっていなかったのだろう。唇にくっつくための粘着力が紙ののりとして微量であるが作用したことに関心した。母に老化が来ていることを実感させられ少し悲しくなった。